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シンガポールの謎を解く!歴史、経済、政治がわかる書籍のご紹介

シンガポールに住んでいると教育や政治の仕組みに疑問が湧いてきませんか?幼い頃から始まる熱心な教育制度、ほとんどが与党議員で構成される国会、様々な民族が共存している社会や多数の外国人労働者と急速な経済発展、世界一と言われる治安の良さ。シンガポールの歴史を学ぶと不思議な制度に隠された事情や理由が見えてきます。

今日は、シンガポールの歴史、経済、政治のことがよく分かる書籍をご紹介します。

マンガで読む「シンガポール建国の父」リー・クアンユーの伝記

シンガポールに住んでいる方であれば、「建国の父」リー・クアンユーの名前は何度も耳にしたことがあるでしょう。シンガポール初代首相であり、現首相リー・シェンロンの父親でもあります。シンガポールが独立した1965年よりも前の1959年から1990年まで約30年間、強いリーダーシップでシンガポールを近代国家へと導きました。

イギリスの支配下であった時代にシンガポールのエリート一家に生まれ、日本の占領期を生き延びたリー・クアンユーは、1955年の選挙に出馬し弁護士から政治家に転身、1959年の選挙で自らが党首を務める人民行動党が圧勝し、35歳で首相に就任しました。

その間、1957年にシンガポールは英連邦内自治州となり、1963年にはマレーシア連邦の一部となりました。しかし、シンガポールとマレーシアの間で起こった民族問題を解決することができず、1965年にシンガポールはマレーシアから追放され独立国家となります。決して華々しい独立ではなかったのです。

この伝記では、リー・クアンユーの子ども時代からシンガポール独立までを主に描いています。華人vsマレー人といった民族紛争や対抗勢力との争い、近隣諸国との緊張した外交など、シンガポールは国家の危機に何度も直面しました。これらのことが国の発展の障害となると考えたリー・クアンユーの考えに基づき、今のシンガポールが形作られていったのです。

次に紹介する『物語 シンガポールの歴史』を読む前にマンガで流れをおさえておくとわかりやすいです。

 

シンガポールの今を歴史から学ぶ

シンガポールのホーカー

シンガポールの始まりから現代までの全てを網羅している書籍です。この一冊でシンガポールへの理解が深まり、疑問のほとんどが解消されるでしょう。まずは目次を紹介します。

  1. シンガポールの曙 – 19世紀初頭
    ラッフルズによるシンガポールの発見と植民地化、自由貿易と移民者について
  2. イギリス植民地時代 – 1819〜1941年
  3. 日本による占領時代 – 1942〜45年
  4. 自立国家の模索  − 1945〜65年
    イギリスからの独立とマレー連邦時代
  5. リー・クアンユー時代 – 1965〜90年
  6. ゴー・チョントク時代 − 1991〜2004年
  7. リー・シェンロン時代 − 2004年〜
  8. シンガポールとは何か

歴史だけではなく、外交、国防、教育、政治、選挙制度、経済、政府系企業、言語政策、持ち家政策やカジノ建設から水問題まで、シンガポールの全てに言及していて、最初から最後まで興味深く読める書籍です。敢えて言えば、リー・クアンユー時代の「開発主義国家 – 特異な教育制度と管理システム」の章が私にとって学びが多く、現在のシンガポールの制度の説明がされている箇所でした。

この新戦略の下で、あらゆる分野で政府が先頭に立つ国家主導型、それに、日本や欧米先進国の企業に頼る外資依存型が採用される。その際に、外国企業は規律ある労働力など好ましい投資環境の国を選ぶことから、政治社会を安定させて、投資環境を整えることが不可欠だと考えられた。人民行動党が、野党や政府批判勢力を管理して政治社会の安定に務めたのはこの論理のためであり、政治は経済発展の手段とみなされたのである。(115ページ)

外国の企業を誘致するために、蚊の駆除を徹底的にするし、安全な国家、安全な飲料水、清潔な街並みを作っていったということはよく知られていますが、その前後の歴史と当時シンガポールで起こっていた問題と合わせて考えると、改めて機能的で合理的で理にかなった政策であると思うのです。

 

リー・クワンユーの言葉から日本を考える

本書の冒頭で、リー・クワンユーについて次のように述べられています。

国際問題に関して、同時代のアメリカや中国など世界の指導者が熱心にその動向を追い、つねに教えを請い、注意深く耳を傾ける。そんな人物は、「シンガポールの哲人」くらいのものだ。(前書きより)

リー・クワンユーが質問に答える形式で、今後の世界情勢について鋭い洞察力と率直な言い回しで見解を述べています。特にアメリカ、中国、インドについて多く言及されています。

日本については、このように述べられています。

日本をはじめとする東アジア諸国は基本的に自民族中心で、社会の結びつきが強い。自分たちの社会に、簡単に外国人を受け入れようとはしない。

日本、韓国など東アジアの国々は、グローバル化した市場で競争するために根本的な文化の変化を受け入れる必要がある。

また、同じ東アジアに属する中国については、

シンガポールのように主要言語に英語を採用しないかぎり、国外の有能な人材を登用する際に生じる言語障壁や付随する問題を乗り越えられるかどうかはわからない。

外国企業の誘致のために民族紛争問題に取り組み、思い切った言語政策を実現するなど、簡単ではないことを成し遂げたリー・クワンユーの言葉に説得力はありますね。シンガポールの歴史や国土の広さ、人口、民族構成などの条件が整って実現できたのだと思います。

 

本当にこんな世界があったのか、金融国シンガポール

シンガポールを舞台とした、日本人が主役の金融ドキュメンタリー小説です。パナマ文書事件で「タックスヘイブン」という語を頻繁に耳にするようになりましたが、シンガポールは「オフショア」として新興富裕層の資金が流れてくる場と説明されています。

資金運用は自分にとっては縁遠い話ですが、資金が集まる金融国としてのシンガポールの一面や資産管理をするプライベートバンカーの仕事内容、富裕層たちの生活など、本当に現実の話なのかと思いながら、一気に読める興味深い内容の本です。

オーチャード、マリーナベイ、明治屋、カッページなど、馴染みのある地名やホテルやお店が出てくる点では親近感のわく話でもあります。同業の方が読むと伏せ字の登場人物まで予想できてしまうそうです(!)

 

資源小国シンガポールの経済成長の秘訣

この書籍の中でシンガポールについて書かれているのはほんの一部ですが、非常にコンパクトにシンガポールの特徴を説明しているので紹介します。

資源小国のシンガポールは、

  •  鉱産資源に恵まれていない
  • 農耕地を広く取ることができない
  • 水資源に乏しい

水はマレーシアから輸入し、食物もほとんどを外国からの輸入に依存しています。上記でも説明したように、外国資本に頼らなくては生き延びていけません。治安を良くするために、一つの民族を優遇するような政策はありません。英語の他に、中国語、マレー語、タミル語と公用語が4つある理由です。

英語が公用語、そして政情が安定してる。
これは、海外からの投資を呼び込むのに十分すぎる条件です。(227ページより)

また、シンガポールの資源は「人」であるために人材育成が最優先課題ということも述べられています。この書籍で紹介されている他国と比較すると、シンガポールの特異性を理解することができます。

 

シンガポール国立博物館で歴史の知識を深める

シンガポール国立博物館では、植民地時代よりも前から現代までのシンガポールの歴史を学ぶことができます。特にシンガポールの独立を宣言したリー・クワンユーの演説を映像で見ることができたことが感慨深かったです。

シンガポール国立博物館

シンガポール国立博物館(National Museum of Singapore)

住所:93 Stamford Road, Singapore 178897
最寄り駅:MRT Bras Basah (ブラスバーサ)駅、Dhoby Ghaut(ドビーゴート)駅


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