中医学と西洋医学の違いとは
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中医師さんに聞いてみた。中医学と西洋医学の違いとは

シンガポールは東南アジアの中でも医療水準が高い国の一つとして知られているのは皆さんもご存知のことでしょう。

医療が優れているシンガポールには「西洋医学」と「中国医学(中医学)」の病院・診療所があります。多くのシンガポール人は、昔から中医学の考え方を病気にかかった時だけでなく、日常の食事にも取り入れています。

そこで、今回はシンガポール人中医師のLeong Kwai Yin先生にお話をうかがい、「西洋医学との違いを知りたい」「どういう症状のときに中医師さんに診てもらえばいいのか」「中医師さんはどんな治療をしてくれるのか」「漢方(生薬)についてもっと知りたい」といった、中医学にまつわる疑問についてお答えいただきました。

中医師さんに聞いてみました!

中医学と西洋医学の違いを教えてください。

一言で言うと「西洋医学は『病気』を治し、中医学は『人』を治す」という違いがあります。
例えば「がんの治療」。西洋医学の場合は、腫瘤(しゅりゅう)(腫瘍)があれば「がん」なので、それを手術で切除して無くしてしまえば終わり、という考え方です。中医学では、腫瘤があるかないかは関係ないのです。もちろん、体内に腫瘤あることで日常生活に不便をきたしますが、その不便をうまく無くして「がんと共存する」「がんと一緒に生きる」ということを考えます。なので、西洋医学と中医学では根本の考え方が大きく異なると言えるでしょう。

シンガポールにはどのくらいの中医師さんがいらっしゃるのですか。

2004年からシンガポールでは中医師の国家資格制度がスタートしました。現在(※)、中医師資格を有しているシンガポール人は2,000人以上います。中国語だけでなく、英語を話す中医師さんもいますし、日本語が話せる中医師さんもいます。シンガポールで診療している日本人の中医師さんもいますので、日本人の方でも心配なく診療してもらえます。

中医師さんは具体的にはどんな治療を行っているのですか。

中医師が行うのは「鍼灸(はり・きゅう)」「漢方薬の処方」「推掌(すいな・マッサージ)」の3つです。患者さんの症状と病気の「根源」に合わせてどんな治療が適しているのかを考えます。例えば、同じ風邪の症状であっても「寒証」(寒気を伴う風邪)と「熱証」(ほてりや熱を伴う風邪)とをきちんと分別します。日本でよく知られている漢方薬の一つに「葛根湯(かっこんとう)」がありますが、これは「寒証」の風邪に効く漢方薬です。日本でポピュラーな理由の一つは、日本人の風邪は「寒証」が多いからという理由もあります。

最近は鍼灸や推掌を受ける人が多いですね。ただ、肩が凝っている人でも鍼灸や推掌よりも漢方薬を処方することもあります。実は肩こりに早く効く漢方薬もあるんです。

また、ダイエットや美容を目的に中医師のもとを訪れて漢方薬を処方してもらっている方もいらっしゃいます。

最近、シンガポールの国内で「ヘイズ」が大きな問題となっていますが、ヘイズに伴うさまざまな症状に悩まされている患者さんにはどういった治療を行っているのですか。

中医学で病気の原因となる6つの邪気「風」「寒」「暑」「湿」「燥」「火(熱)」のうち、ヘイズで現れる症状は「燥」、つまり「乾燥」からもたらされるものです。ヘイズがひどくなると、目がかゆくなったり、鼻水が出たり、喉が痛くなったりという症状が現れますが、すべて乾燥が原因となって引き起こされる症状と考えています。基本的には患者さんそれぞれの症状に適した漢方薬を処方します。

漢方薬のもとである「生薬」は何種類くらいあるんですか。

漢方薬に使用する「生薬」はおよそ2万種類あります。生薬の種類には、鉱物、動物、虫、草、葉、根、枝などたくさんあります。例えば、そのへんの道路端に生えている草も知らない人にとっては雑草かもしれませんが、中医学を知っている人にとっては生薬として使えるものもあるんです。また、「桑」という植物は、「葉」は風邪に効き、「枝」は関節痛に効き、「実」は睡眠不足に効くといったように、部位ごとに生薬としての効能が異なる植物もあります。

中国は海も山もありますから生薬になるものがたくさん手に入りますし、ペルシャや中東からも取り入れているそうです。東南アジア各地でも生薬を手に入れることができ、シンガポールでも使われています。当然ながら、化学反応によって作られた薬は一切使っていません。漢方ショップで販売されている「顆粒中葯」は化学反応で顆粒状にしていますが、化学薬品を加えている訳ではありません。

日ごろ私たちが何気なく食べているものの中にも「生薬」があるのでしょうか。

「とろろ(山芋)」は胃腸や肺の機能を高める効果がありますし、「昆布」は痰(たん)に効きます。「ショウガ」は漢方薬の約半数に使われているくらい優れた生薬ですし、生魚の防腐を目的にお刺身に添えられている「シソ」は風邪に効果があります。

実は日本人がよく食べている和食には多くの生薬が取り入れられています。そういった意味でも和食は非常にヘルシーな料理だと言えますね。

西洋医学で使われる薬と「生薬(漢方)」はどう異なるのですか。

西洋医学で使われる薬は痛みを取ったり、熱や血圧を下げたりといった症状に対する即効性は高いと言えます。ただし、薬を飲んでいる間は症状がおさまっているけど、薬を飲むのをやめてしまうとまた症状が出るということがよくあると思います。つまり「症状を抑える」という感じなのです。
漢方薬の場合は効きが遅いと言われますが、中医師が症状の「根源」をきちんと診察して処方した漢方薬であれば速く効くと思います。しかも、体調が良くなったらその漢方薬を毎日飲み続ける必要はありません。

私自身も風邪をひいたら漢方薬を飲みます。自分の症状にぴったりと合った漢方薬を飲んで一晩寝ればだいたい良くなりますね。

また、漢方薬は、適量を処方すれば赤ちゃんも小さいお子さんでも飲むことができます。化学薬品よりも安全性は高いと言われているので安心して服用していただけます。ただ、東洋人と西洋人は体質が違うので、西洋人に漢方薬が効かないときもありますね。

漢方薬は身体に優しいとよく聞きますが、副作用はないのでしょうか。

「薬なら3分(3割)は毒」という言葉があるように、漢方薬を服用して副作用が出ることはあります。ただ、当然ながら中医師は副作用をどうすれば最小限にするかを考えながら処方しています。

今まで中医学や漢方のことをあまりよく知らなかったという方も、中医学の考え方が少しお分かりいただけたのではないでしょうか。シンガポールではとてもポピュラーで身近な存在である中医学や漢方を少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか。

お話をうかがった人

Singapore Chinese Physicians’ Association(新加坡中医师公会)Secretary-General
中医師 梁桂贤(Leong Kwai Yin)さん
平日はNational Environment Association(NEA)で勤務し、週末のみチャリティーで中医師として活動する。

※2013年6月に Healthy Beauty Journal に掲載された記事を加筆・修正しました。


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